繊維の知識/生地の種類
一般的な繊維の知識について、まとめました。
(同一の素材を使用している布地でも、特徴やメリット・デメリットには差がございます。あくまで一般的な繊維の情報としてご覧くださいませ)
綿(コットン)
綿について
綿の木は「あおい科わた属」で、生産においては天候の影響を受けるため、生産量・品質が変動する事があります。
綿はきれいな花を咲かせた後に実ができ、実の周りに繊維細胞が細かく生長し、成熟して殻が弾けてコットンボールとなります。コットンボールを摘み取って、種と繊維を分けて、紡績・製糸へと続きます。
綿繊維の太さはまちまちですが、平均的には、太さは0.01~0.02mmで、長さは20~40㎜です。
断面は中空でリボン状の扁平になっているので、軽くて保温性が有ります。
1本の繊維は200~300回の天然のよじれ(天然撚り)があるので、糸に紡ぐとしっかり絡み合います。
また、繊維は通常7~10%の水分を含みますが、水分を除くと94%がセルロースで構成されています。
3年以上合成化学物質を使用しない農地で、一切合成化学肥料を使わずに、栽培した綿花「オーガニック・コットン」は、環境保護の面から評価されています。
特徴
・吸湿性があり、放湿の時に気化潜熱を奪い、涼しく感じる。
・肌触りが軟らか。
・適度な保温性がある。
・静電気が起きにくい。
・強度は十分あり、洗濯・漂白が容易。
・高温のアイロンに耐える。
・洗濯で収縮し、シワになりやすい。
・可燃性がある。
取り扱い注意事項
・水通しや洗濯により縮みがある。
・アイテムによりドライクリーニングが必要な場合がある。
(例えば綿にはこんな布地がございます)
麻(リネン・ラミーなど)
麻について
麻と呼ばれる繊維には多数あり、いずれも植物の幹(又は茎や葉)から採取されます。
主な物は亜麻(Linen、リネン)、ちょ麻(Ramie、ラミー)、大麻(Hemp、ヘンプ)、黄麻(Jute、ジュート)、マニラ麻などです。
ただし、家庭用品品質表示法による「麻」とは上記のうち、亜麻(リネン)とちょ麻(ラミー)だけを言います。
麻は人類の歴史と共に古くから用いられ、ヨーロッパでは19世紀まで亜麻(リネン)の下着が一般的でしたし、日本でも古くからちょ麻(ラミー)は服地として用いられていました。
特徴
・放熱性が良く、吸・放湿性に優れるので涼しい。
・ナチュラルなスラブやネップがあるので、独特の凹凸に富んだ表情がある。
・シワになりやすい。(シワをファッションとして利用することもある)
・生成りは洗濯で白くなりやすい。
(麻の生成りは自然の色の為、同じ色の再現が困難。また、洗濯で色あせる)
・水に入れると硬くなり、アイロンを当てると柔らかくなる。
取り扱い注意事項
・家庭での漂白は避ける。
・水洗い洗濯がおすすめ。
(麻は汚れを落としやすい繊維ですが、汗の汚れはドライクリーニングだけでは落とせません。また、汗を放置すると黄色くなります)
(例えば麻にはこんな布地がございます)
ポリエステル
ポリエステルについて
1950年代、テメリカデュポン社(ダクロン)とイギリスICI社(テリレン)によって、それぞれ開発された石油を原料とする合成繊維です。
日本では東レと帝人がいち早く製法ライセンスを受け国産化を行い、両者の共通商標として「テトロン」が使用されました。
その後、製法特許の経緯を経て国内では東洋紡、カネボウ、クラレ、ユニチカ、三菱レイヨン、旭化成などが製造に乗り出し「エステル」の商品名で市販を開始しました。
現在、合成繊維の中では世界的に最も多い繊維用素材となっています。
この繊維は用途展開が多様なため、超極細繊維糸、異形断面糸、中空糸、異収縮混繊糸等、それぞれ異なる目的で多岐にわたる糸の開発がされています。
特徴
・美しい光沢感がある。
・極めて強い(耐薬品性、強度)繊維である。
・ウオッシュ&ウェア性に優れているため、洗ってノンアイロンで着られる。
(防シワ性、速乾性、寸法安定性に優れている)
・熱可塑性がある。(プリーツ加工に適している)
・静電気を帯びやすい。
・異なる種類のポリエステルを用いることで、染め分けができる。
(C/Dポリエステル(カチオンダイアプル)とレギュラーポリエステルを使用すると異色染が可能)
・減量加工ができる。
(ポリエステルをアルカリ処理することで、よりシルキーな光沢やしなやかさが生まれる)
取り扱い注意事項
・アイロンは当て布を使用。(テカリ防止のため)
・天然繊維に比べ熱による影響を受けやすい。(ストーブやアイロンなど)
(高温のものに直接触れると繊維が溶けやすい)
(例えばポリエステルにはこんな布地がございます)
ナイロン
ナイロンについて
ナイロンは1935年にアメリカ・デュポン社で発明され、合成繊維の中で最も早く工業化されました。
開発当初は石炭を原料とし、『蜘蛛の糸よりも細く、鋼鉄よりも強い』と言うキャッチフレーズでデビューし、衣料用にストッキング、水着、スキーウエアーなど、インテリア用にカーペットなど、産業資材用に魚網、ロープ、タイヤコードなど広い用途に使用されています。
ナイロンは、ポリアミド系の繊維でナイロン6・ナイロン66などのタイプがありますが、日本では主にナイロン6が生産されています。
他にナイロンの仲間に「アラミド」がありますが、品質表示法ではナイロンではなく「アラミド」と表示されます。
特徴
・比重が軽い。
・摩擦や折り曲げに対して強い。(濡れても強さは変わりません)
・弾力性に富み、シワになりにくい。
・殆ど水を吸わず、吸湿もしないので乾きが早い。
・熱可塑性(熱を加えると、その形が固定される性質)があり、適切な熱セットをすると伸縮、型崩れしにくい。
・薬品や油に強い。
・虫やカビの害に強い。
・染色しやすく、発色性も良い。
・静電気を帯びやすく、埃がつきやすい。
取り扱い注意事項
・長時間紫外線(日光)にあたると黄変(特に白地)、及び強度低下するので陰干しがおすすめ。
・アイロンは低温で、当て布を使用。
(例えばナイロンにはこんな布地がございます)
キュプラ
キュプラについて
キュプラはレーヨンやポリノジックと同じ再生繊維ですが、主原料をコットン・リンター(綿の実から綿花を採った後に残る短い繊維)とし、銅アンモニア溶液で繊維を溶かして紡糸します。
キュプラとは『銅』の意味です。つまり、製造法にちなんだ名称です。
「キュプラ」は別名「ベンベルグ」とも呼ばれています。「キュプラ」が一般名称で、「ベンベルグ」は固有名詞(旭化成の商標名)です。ただし、衣料品の品質表示法では指定用語である「キュプラ」しか使えません。
キュプラは非常に細い糸ができ、トリコットや薄地の織物生地として使われます。フィラメント糸が主体ですが、ステープルも少し生産されています。
特徴
・吸湿性、放湿性がある。
・優雅な光沢を持っている。
・やわらかくしなやかなので、ドレープ性がある。
・染色性が優れている。
・静電気が起きにくい。
取り扱い注意事項
・ゴシゴシ洗ったり固く絞ることは避けて下さい。
・摩擦によって繊維がフィブリル化(毛羽立ち)しやすいです。特に湿潤時に起きやすいので、シミなどが付着した場合はこすらずに乾いたタオルで叩いてください。
(例えばキュプラにはこんな布地がございます)
毛(ウールなど)
毛(ウールなど)について
毛には、羊毛と獣毛(カシミヤ、アンゴラ、モヘヤ、アルパカ、キャメル、他)があります。
一般的にウールとは羊毛(面羊の毛)の事を言います。
世界のウールの生産量の約40%がメリノ種で、他の羊毛に比較して柔らかく、光沢が有ります。また、世界最大の生産国はオーストラリアです。
羊毛はケラチンと言うタンパク質でできていて、うろこ状の表皮部分(スケール)と皮質部分(コルテックス)から構成され、スケールが繊維を保護しています。
また、表皮部分(スケール)の表面は水をはじく性質があり、皮質部分(コルテックス)は吸湿性があります。
さらに、コルテックスは2層構造になっていて性質はそれぞれ違います。
その為、熱や水分の作用で収縮差が生じ、繊維に繊維の縮れ(クリンプ)が生まれます。
吸湿や乾燥によりクリンプが伸縮することをハイグラル・エキスパンションと言います。
これはウールの大きな特徴で、ウールが「生きている繊維」と呼ばれる理由です。
特徴
・繊維に伸縮性と弾性があり、シワが寄りにくい。
・熱の伝導率が少なく、保温性に富んでいる。
・水をはじく性質がありながら、湿気を良く吸収するため、汗をかいても湿った感じが少ない。
・表面のスケールの為、水分を含んだ状態でもみ込むと繊維が絡み合ってフェルトになる。
・ピリング(毛玉)になりやすい。
・燃えにくい繊維である。
取り扱い注意事項
・クローゼットなどでの保管に注意が必要。(長期保管時は防虫剤も必要)
・水の影響を受けやすいので、一般的には水洗い洗濯は避けてください。
(ただし、ウォシャブル加工製品は水洗い可能)
・梳毛織物(さらさらした美しい毛織物)はアタリが出やすいので、アイロンは当て布が必要です。
(例えば毛(ウール)を含むこんな布地がございます)
人工皮革・合成皮革
人工皮革・合成皮革について
人工皮革は、天然皮革の外観や構造をまねて、ポリエステル等の微極細繊維を不織布状にし、ポリウレタン樹脂の中に含浸したものです。
スエードタイプのものと銀面タイプのものがあり、どちらも一見して天然皮革と区別することは困難です。
合成皮革は、生地表面にポリウレタン樹脂などをコーティングする方法と、離型紙上にフィルムを作って基布に貼り含わせる方法があります。
この際、基布にあらかじめポリウレタン樹脂を塗布して水中に浸漬し、微多孔層を作ったものを湿式法、微多孔層のないものを乾式法と言います。
しばしばポリウレタンが使用されるのは、変形自由度が大きいこと・風合いが良いこと・柔軟であることがいえます。
特徴
・天然皮革に似たファッション生地である。
・軽くてソフトな風合いを持っている。
・人工皮革、合成皮革に使用しているポリウレタン樹脂は、通常4~5年位で脆化し始める。
(脆化の要因は汗・紫外線・酸化窒素ガス・ドライクリーニング溶剤の残留などが考えられる)
・長期間の保管したままでも脆化するので、定期的に着用される事をお勧めします。
取り扱い注意事項
・汗、雨、整髪料などが付着したら、乾いたタオルで水分を拭き取る。
・使用後は陰干しにして、乾燥させる。
・直射日光に長時間当てない。
・ドライクリーニングから返却されたら必ずビニール袋を取る。
・高温多湿の場所に長時間放置しない。
・年に数回は風通しの良い場所で陰干しする。
(例えば人工皮革・合成皮革にはこんな布地がございます)
ポリウレタン
ポリウレタンについて
ポリウレタンは1940年頃ドイツで開発された、ゴムのように伸び縮みする弾性繊維です。
天然ゴムよりも細くする事ができ、薬品に強く、一般的にはポリウレタンを芯にして、天然繊維、化学繊維を巻き付けた加工糸として多く用いられます。
最近ではジャケットやパンツを始め、ストレッチ素材と呼ばれる商品の多くがこの糸を使用しています。
また、水着・スポーツウェア・靴下・下着など、幅広く用いられています。
他には、コーティング樹脂としても使用されます。
特徴
・ゴムのような伸縮性がある。
・天然ゴムとは違い染色性がある。
・塩素や紫外線、汗やガスによって劣化しやすい性質がある。
・温度や湿度の急激な変化にあっても、素材性能は安定している。
取り扱い注意事項
・水洗いの場合、強いもみ洗いは避ける。
(部分的に伸縮性が変わる事があります)
・洗濯機洗いの場合はネットを使用する。
(製品の「ねじれ」による変形を避けるため)
・ドライクリーニングは石油系がおすすめ。
・スチームアイロンやタンブラー乾燥を避ける。(製品の収縮が起こる恐れあり)
・ポリエステルとの混用素材(濃色)の場合は、ドライクリーニングにより、淡色部への色移りの恐れがあります。
(例えばポリウレタンを含むこんな布地がございます)
アクリル
アクリルについて
「素肌に甘えるアクリル繊維」これがアクリルスパンの性質を良く表しています。
ふんわりと柔らかく、温かな肌触りは合成繊維の中で一番ウールに似た風合いを持っています。
この「ふんわり」とした感じを『かさ高性』とか『バルキー性』と呼んでいます。
アクリル(スパン)はカシミヤ風の柔らかい物からモヘヤ風の粗い味の物まで自由に作ることができ、ウールの分野に大きく進出していますが、特にアクリルの優れた性能が生かされるのがニット製品です。
アクリルには他にシルクに似た長繊維(フィラメント)があります。毛足が長く、柔らかな肌触りを持った動物の縫いぐるみや、最後のおしゃれであるヘアピースなどの洋風かつらもアクリルの得意とするところです。
特徴
・毛よりも軽くてかさ高い風合いがある。
・保温性が良く、ふっくらと暖か。
・羊毛と同様に弾性回復率に優れ、シワになりにくい。
・非常に発色性が良く、好みの色に染められる。
・太陽光線に当っても、ほとんど影響を受けない。
・薬品に強く、カビや虫害を受けない。
・熱可塑性がある。
・ピリング(毛玉)が発生しやすい。
取り扱い注意事項
・ニット製品の場合は自重により伸ぴやすい。
(洗濯時はバスタオルで水気を十分吸い、風通しの良い所で平干しする。収納時にはハンガー吊りを避け、たたんで保管する)
・アイロン掛けはスチームアイロンを使用し、浮かしながら蒸気を軽く当て、形を整える程度にとどめる。
レーヨン
レーヨンについて
レーヨンは世界で一番早く絹を目標に創り出された化学繊維です。このレーヨンを出発点として、その後の化学繊維が急速に発達しました。
レーヨンは化学繊維の再生繊維に分類されます。
これは、ユーカリやアカシヤなどの木材パルプ中の「セルロース(繊維素)」をアルカリ処理し、二硫化炭素と反応させたレーヨンの原液「ビスコース」を細い孔が多数ある口金から酸性浴中に押し出し、セルロースを繊維状に再生させたものです。
その製法が再生繊維といわれる理由で、「ビスコースレーヨン」や単に「ビスコース」ともいわれます。
レーヨンは綿や麻と同じセルロースで構成されていますので、土中で生分解して土に環るエコロジー繊維といえます。
特徴
・吸湿、吸水性があり、染色性に優れている。
・他の繊維と馴染みやすく混紡、交織によく用いられる。
・織物や編物はドレープ性に優れ、美しいシルエットが表現できる。
・シワになり易く、水に濡れると縮んだり、強さが少し弱くなる。
取り扱い注意事項
・洗濯時にゴシゴシ擦ったり、固く絞る事は避けて下さい。
・水分を含んだ状態で強い摩擦を受けますと「白化」します。
(繊維が分繊する事で白っぽく見えます)
・部分的な水の濡れ、汗、水溶性の汚れなどが付着しますと「あと」が残り、ドライクリーニングに出しても取れない場合があります。
・飲食物をこぼしたり雨に濡れた時は、こすらずに素早く乾いたタオルなどでたたいた後、乾燥させて下さい。
(例えばレーヨンを含むこんな布地がございます)
アセテート
アセテートについて
アセテートは木材パルプのセルロース(繊維素)で構成されている点はレーヨンと同じですが、これに酢酸を作用させて作る化学繊維です。
セルロースは天然の物であり、酢酸が合成品である事から、半合成繊維に分類されます。
アセテートにも種類があり、セルロースに付く酢酸基の数で、「ジ・アセテート」(ジは2つの意味)と「トリアセテート」(トリは3つの意味)に分かれます。一般的にはアセテートはジ・アセテートのことをいいます。繊維としては、ジ・アセテートが圧倒的に多く生産されています。
トリアセテートはジ・アセテートとほぼ同じ特性を有していますが、湿潤時の形態安定性、耐熱性に優れるなど、より安定した性質を持ちます。
特徴
・シルクのような美しく上品な光沢と感触がある。
・比重は綿・レーヨン、キュプラなどより軽く、ウールとほぼ同じで、ふっくらとした風合いと豊かな感触がある。
・美しいドレープとシルエットが表現できる。
・熱可塑性(熱を加えると、その形が固定される性質)があり、プリーツ加工などに有効。
・引張強度はレーヨンより弱く、摩擦も劣る。
取り扱い注意事項
・大気中の汚染ガス(自動車や石油ストープの排気ガスなど)により、変色・退色する事がある。
・シンナーが含まれる溶剤(除光液等)により、溶けてしまったり、穴が開いたりする可能性があるので、その様な物を扱う時は注意が必要。
絹(シルク)
絹(シルク)について
絹繊維は、蚕が繭を作る為に吐く繭糸から出来ており、2本のフィブロインという繊維の周りをセリシンと言うニカワ質が覆った構造です。
フィブロインの断面は三角形であり、優雅な光沢はこの構造に依存しています。
また、蚕が吐き出す繭糸は1000m近くあります。このままでは硬い繊維(生糸)ですが、アルカリ性の熱湯につけるとセリシンが溶けて絹特有の風合いと光沢の練り絹になります。
絹はフィラメント(長繊維)として使用される事が多く、独特の風合いが得られます。その他、繭くずや生糸くずから紡績したスパン糸(絹紡糸)もあります。
絹はウールと同様蛋白繊維に属している為、燃やすと髪の毛が燃えた時と同様の臭いがします。
特徴
・軽くて、しなやかで、上品な風合いを持っている。
・美しい光沢を持っている。
・染め付きが良く、深みのある色合いが出る。
・肌に対して違和感がない。
・摩擦に弱く、水分を含んだ状態で摩擦すると毛羽立つ。
・場合により色落ちする事がある。
・紫外線に当ると黄変する。
取り扱い注意事項
・絹製品の多くは摩擦に弱いため、水洗いを避ける。
(ただし、ウォッシャブル加工製品は水洗い可能)
・水洗いの場合は、中性洗剤、押し洗い、タオルで脱水、形を整えて陰干しする。
・保管は、光が当たらない湿気の少ない所で行う。